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ここ…黒の教団本部に一月ほど前にふらりと現れた少女の名だ。
齢は恐らく10代前半。ふらりと門番の前に現れ、少女は手にしていた一通の紹介状を監視ゴーレムに見せびらかした。
教団本部室長、コムイ・リーは改めてその紹介状に目を通す。
書かれていた内容は荒唐無稽。しかし一蹴するのを差出人の名が妨げる。
(馬鹿げてる…)
少女は、イノセンスに適合しているわけでも、イノセンスを所持しているわけでもなかった。
これの事実確認はとうの昔に行っている。確かに彼女はイノセンスを所持すらしていなかった。
だが、紹介状にはその彼女をエクソシストにしろ、と書かれていた。
(本当に、馬鹿げている…)
コムイはその紹介状を…クロス・マリアン元帥からの紹介状を自身のデスクの奥へと押し込み眠らせる。
他者に見せてはいけない。そう判断したからだ。
そう、口外は出来ない。
彼女の秘密を、知る者はほんの一握り。これ以上他者に漏らすわけにはいかない。
彼女が、イノセンスに所持、および適合すらしていない事実も。
その彼女が、イノセンスでしか破壊できないAKUMAを破壊できる事実も。
「ジョーカーか…随分と、お誂え向きの言葉だ」
書面の内容を思い出す。
ジョーカー、クロスは少女をそう喩えていた。
あの年端も行かない少女にはそう喩えられるだけの理由がある。
イノセンスを持たない…されどAKUMAを破壊できる少女。
ならば“逆”は?
推測の域は出ないが可能性は低くない、と書面にはそう綴られていた。
管理しなくてはならない。この教団に縛り付けなければならない。
あの年端も行かない少女を。
繋ぎ止めなければ、いつこちらに牙を剥くか分からない。
あのクロスが味方であると判断して本部に送り込んできたのだ。味方であるのは間違いない。
今現在は、という言葉がつけられてしまうが。
一抹の不安は消えない。されど少女の強さが、圧倒的である事実も看過出来ない。
先日の彼女の初任務の映像を思い出す。何としてでも繋ぎ止めなければならない、そう認識するのに十分な程の力の持ち主。
その力を、我々に向けさせない為に。
イノセンスの破壊に、走らないように。
00.ジョーカーと言う名の爆弾
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異世界から来た事は知られてません
20120106